人間は無意識のうちに主観で行動するので、自分を客観視するのはカンタンなようで意外に難しいものです。
ただし社会の一員として行動するうえで、主観だけに頼っていて良いのでしょうか。
主観とは自分の尺度なので、それが世間一般に通用するとは限りません。
主観にこだわりすぎると、「わがまま」とか「扱いづらい」といった不名誉な印象を持たれてしまいます。
客観的な視点は、思考の柔軟性も生み出します。柔軟性を身に付けるだけで、対応力に幅と深みが増すので、客観的な視点は有能な人材には欠かせません。
なぜ自分を客観視するのか
仕事ができる人は、常に自分を客観視する術を持っています。主観的に見えることでも、知識と経験に情報を照らし合わせて、客観性を保っているのです。
仕事の質を良くするには、多角的な視点から考察することが大切です。
判断基準に客観性を付け加えることで、物事の本質や裏側を見極められるようになります。
的外れな判断で回り道しないためにも、自分を客観視する習慣を身に付けたいものです。
自分の考えや行動を検証するため
仕事を主観だけでこなしていると、自分が思い描いた理想に偏って進んでしまいます。
悪いことではないのですが、ともすると最終目的を見失ってしまい、迷走を始めてしまうでしょう。
迷走している途中で気が付けば良いのですが、そのまま突っ走ってしまうと、求められていることとかけ離れた結果になってしまいます。
そうならないためにも、仕事の過程における客観的なチェックは不可欠です。
自己診断機能が働くため、常に軌道修正しながら仕事を進められるので、無駄のない仕事につながります。
よって主観による暴走や迷走に陥らないために、自分の考えや行動を客観的に検証しつつ、仕事のズレを補正する習慣が必要なのです。
自分を成長させるため
世の中には完璧な人間など一人もいません。しかし主観を重視する指向が強い人は、自身を完璧だと思い込む傾向にあります。
自分が完璧だと誤解している人は、ダメな部分を反省して改めないので、そこで成長が止まってしまいます。非常に残念で哀れな人です。
失敗を素直に受け入れる気持ちがあれば、そこから何かを学び取って成長できます。
大成した経営者でも、失敗を糧に大きな成功をつかんでいます。
一生学び続けて成長したいのであれば、自分を客観的に見つめなおして、失敗を悔い改める姿勢が必要です。
組織の一員としての役割を果たすため
会社や学校など、日頃自分が所属している集団の中で、自分の立ち位置が認識できているでしょうか。
所属の中での担当は居場所であり、立ち位置とは違います。
立ち位置とは自分の経験とスキルを発揮できる場所なので、自ら探さなければいけません。
担当という居場所をヤドカリのように背負って、集団の中で自分が活きる場所を探すイメージです。
また集団というパズルに、自分が持っている能力のピースをはめ込む部分を探す感じですね。
集団を俯瞰して見られなければ、自分を活かせる立ち位置は見つかりません。
また自分の経験やスキルを客観視できなければ、パズルのピースをはめる場所は見つかりません。
自分と所属する組織や集団を客観視できれば、立ち位置と能力の活かし方がわかります。
それさえわかってしまえば、的を射た立ち振る舞いができるので、一目置かれる存在になれるでしょう。
他人からの信頼を得るため
自分自身の言動を省みられない人は、他者に不快感を与える接し方になりがちです。
自我を出し過ぎたり、自分の都合を優先させたりするので、信頼関係が徐々に希薄になってしまいます。
人とのコミュニケーションでは、自分の言動を客観視することが、相手を思いやる行動につながります。
例えば年齢や性別だけでなく、職歴や学歴についてのバイアスがかかった言動は、相手に不快感を与えてしまいます。
よって人として信頼されるためには、常に自分の言動をチェックしつつ、できるだけフラットでニュートラルな対応を心掛けるべきです。
自分を客観視する方法
自分自身を客観視するには相当の覚悟が必要なので、思った以上に困難を極めます。
ちなみに自分は客観視できていると即答する人は、その答え自体が主観的な思考だと気付いていません。
自分を正しく客観視するためには、自己の否定を受け入れる勇気と忍耐力が必要ですが、ムダなプライドが邪魔するため、なかなか実行できないのが現実です。
自分を客観視する行為は、ちょっとした自我崩壊を引き起こすので、精神的な拒絶反応を伴います。
無理に進める必要はないので、徐々に慣れていくことが望ましいあり方です。
他者と比較する
自分を客観視するには、他人と比較するのが一番手っ取り早い方法です。自分が目標とする人物と自分を比べるだけで、違う視点から自己を評価できます。
他にも偉人と言われる功労者と比べるのもいいでしょう。松下幸之助や本田宗一郎が有名ですが、考えや生きざまが著名な経営者について、書籍をもとに自己と対比してみてください。
他人からの率直な意見を聞く
信頼できる人物から、自分に対する評価を聞くことも自己の客観視と言えます。ともすると他者からの率直な意見は、自我を傷つけることになります。
しかし素直に受け入れる気持ちさえあれば、自己のパラダイムシフトを達成できるでしょう。
率直な意見を求めるのは、身近な所では親や兄弟姉妹、気の置けない友達や同僚などが無難です。
「絶対に怒らないから何でも言って」と前置きすれば、自分に対する本音が聞き出せます。
耳が痛い忠告を客観視の材料として、自分を変える起爆剤にしましょう。
見識を広げる
客観的な視点の醸成には、様々な思考をインプットする方法も有効です。例えばビジネス書籍を読む行為は、自分の常識とは違う考えや視点を取り込むきっかけになります。
またセミナーやサークルへの参加は、視野を広げる意味で積極的に行うべきです。
自分の中に存在しなかった情報を浴びて見識を広げると、自分を客観的にはかる物差しが増えるので、よりリアルな自分が見えてくるでしょう。
常に自問自答を繰り返す
「本当にこれで良いか?」という自己への問いかけを繰り返す。これこそが自分の言動を客観視している真の姿です。
しかし自問自答で答えを導くには、それなりの知識と経験と情報が必要で、最初から上手くいことはありません。
自分の疑問を自分で解決できない場合や、自分で導き出した答えが正しいのか不安になることもあるでしょう。
そんな問題に直面したときは、第三者に相談してアドバイスを求めてください。
「聞くは一時の恥聞かぬは一生の恥」と心得て、ムダなプライドは捨てましょう。自分は未熟であるという意識で、常に教えを乞う姿勢を心掛けてください。
つまずきながらも自問自答を続けることが、精神面で成長するトレーニングになります。
そして無意識に自問自答を繰り返せるレベルになれば、客観視によるセルフコントロールが自然にできるまでに成長したと言えるでしょう。
まとめ
自分を客観視することの重要性について触れましたが、主観的な面を総て否定するものではありません。知識や経験から導き出される主観は意思決定の大切な要素です。
しかし主観が先行したり大部分を占めたりすると、偏った思考に陥るので注意が必要なのです。
また客観的な視点は主観の補正する役目ですが、客観が主体となると評論家的な振る舞いが目立つようになります。
主観と客観は異なる視点ですが、お互いに欠点をカバーし合う間柄なので、客観的な事実で主観を補わなければいけません。
自分を客観視することは思った以上に大変なことですが、苦労した以上の成長をもたらしてくれます。
自我をコントロールしながら成長するために、主観と客観を上手く融合させる術を身に付けてください。
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